今回は島津製作所株について解説します。
- 計測事業・重点機種が鍵
- 競合状況。米メーカーが強敵
- 今後の成長ドライバー(重点機種、アフターマーケット、中国・インド・米中摩擦)
- 実は大麻普及の恩恵銘柄!?
- 業績推移とバリュエーション
計測事業・重点機種が鍵
島津製作所の2019度3月期の営業利益では計測事業が80%以上を占めてます。
その計測事業では大き分けて2種類の製品がこの大きな利益を生んでいます。
1つ目が重点機種と2つ目がその他に分かれています。売上構成比は5:5の割合です。
重点機種の主力製品はクロマトグラフ(液体・ガス)と質量分析計
クロマトグラフ は混合物の分離分析を行い、物質中のに含まれる成分の種類・濃度を調べる機械です。クロマトグラフには液体とガスの2種類があります。より高温でガス化した成分を安定的に計測する場合にはガスクロマトグラフ を、液体に溶解されている成分を解明する機器になります。
もう一つ重要製品が、質量分析計です。物質は原子の集まりで、電子を纏っている原子(=イオン)で構成されています。質量分析計は物質を電子や原子レベルの微細なイオンにして、イオンの質量数や数を測定することによって物質が構成されている成分や定量などを測定します。
クロマトグラフと質量分析計はセットで使われていて、まずクロマトグラフ で構成成分を割り出し、そこから質量分析計でその構成成分の質量を測定するという流れになります。
市場売上別構成比
上図の2019年度売構成比からもわかるように、3つの業界に対して比較的バランスの良い売上確保ができています。
1位 ヘルスケア(31%)…医薬、食品、医療機関、委託分析分析業
2位 産業関連(23%)…化学・素材メーカー、電機、自動車
3位 大学・宮内庁(18%)
→基本的には研究開発(R&D)で活用されることが多いので、R&Dの意欲が旺盛であれば需要が上がり、また逆に新規開発をカットするような局面では製品需要は下がってしまう可能性もあります。
島津製作所の計測事業の国別売上では1位は日本。2位は中国となるので、中国に対しての売上のエクスポージャーが大きいことで中国関連銘柄として見られることも多いようです。
競合状況。米メーカーが強敵
アジレント(Agilent)、ウォーターズ(Waters)、サーモフィッシャー(Thermo Fisher)
このアメリカ3社が競合として挙げられます。
島津製作所の売上は地域によってまちまちですが、中国地域ではシェアが高いのに対し、欧米に対してシェアが低いのはこの3社の存在があるからです。
国内競合としては日立ハイテクがありますが、島津製作所の国内シェア50%以上で1位となっており、今後は欧米でのシェアをどう取っていくかが課題になります。
今後の成長ドライバー(重点機種、アフラーマーケット、中国・インド・米中貿易摩擦)
戦略その① 重点機種の拡大
重点機種と呼ばれるLC、MS(液体クロマトグラフ )、GC(ガスクロマトグラフ )の売上高が2014年3期から2019年3期で非常に高く伸びています。これは彼らの製品力が高いことを製品しています。
また、下図より分析機器のエンドマーケット予想ではヘルスケアの分野での成長が期待されています。
特に新薬の開発支援、疾病の早期発見手法の確立などでクロマトグラフが使われていくことを島津製作所は予想しています。
戦略その② アフターマーケットの強化
島津製作所の製品は装置を売ったあとも売り上げが見込める試薬や消耗品、これらをアフターマケットと呼んでいます。例えば、カラムという消耗品の会社を買収して売上を伸ばそうとしています。
この取り組みは好調で、アフターマーケットの計測事業において占める割合は17年3期の28%から20年3期で32%まで増やすことに成功しています。
今後の成長ドライバー① 中国やインドの拡大
中国やインドは今も伸びている国としてR&Dの投資は今後も増えていくことで島津製作所の検測機器の需要も増えていくと考えられます。
また、先ほど述べたように島津製作所のライバルはアメリカのメーカーが多いので、米中摩擦が追い風になる可能性があります。米中摩擦によって、中国はアメリカの製品より日本の島津の製品を優遇する可能性もあります。
また中国では中国薬典(*1)の改正や双一流計画(*2)よりR&Dに投資をしていくような計画もあるので中・長期的に期待できる市場です。
(*1) 『中国薬典』は、国家薬品監督管理 部門により公布され、国家により、 薬品品質を保証し、且つ、人民によ る薬物使用の安全性と有効性及び品 質制御性を保証する為に制定された 薬品法典です。
(*2) 中国の大学の高度化を図るプロジェクト
実は大麻普及の恩恵銘柄?!
少しトリビアっぽく聞こえてしまうのですが、アメリカの多くの州やカナダなどで大麻が合法化されてきています。その成分の分析において島津製作所の計測機器が使われています。今後も大麻が合法化される州や国が増えることで製品の需要が高まるという期待もされています。
業績推移とバリュエーション
島津製作所の売上高と営業利益の推移
13年から18年で計測事業の売り上げ収益が大きく上がったのが一つのターニングポイントです。但し21年3月期はコロナの影響を受けて減益計画を出しています。
コロナの影響ですが、もちろん短期的な需要の減少が考えられますが、中・長期的には決してマイナスではないと思います。
例えば、計測事業では研究機関やヘルスケア企業が感染症対策の研究を行ったり、ウイルス研究向けビジネス、公衆衛生関連ビジネスなどの拡大に伴い需要は拡大されると予想されます。
また一方ネガティブな面もあり、一般的な製造業、ヘルスケア以外の企業ではコロナウイルスの影響で業績が悪くなり、設備投資や開発費を削る可能性があるのでそういった顧客には売り上げが減少する可能性があります。
PERの推移
こちらは会社契約に基づいたPERの推移ですが、過去5年においては20倍台後半から30倍台程度のレンジで推移しています。但し、直近は大きな減益傾向を出しているのでPER水準が切り上がってます。無論、コロナが終われば業績も回復し、会社が見ているほど21年3期は悪くならないと市場は見ている可能性もあります。
またこれは私の個人的な意見ですが、配当の観点から考えても良い銘柄なのかなと思います。下図は島津製作所の一株あたりの配当の推移です。
直近はやはりコロナウイルスを理由に、減配の計画となっています。
実際に過去配当利回りが1%を大きく超えると株価は反発するというパターンです。これは島津製作所が中・長期的に業績が伸ばせるという点を信じている前提で行う投資ですが・・・
以上、島津製作所について投資する上で知っておい期待点についてまとめました!
こちらの内容がより見やすくなっているYouTube動画がブログ冒頭にアップされているので、是非ご覧ください!
頑張っていきまっしょい!
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私は何年も前に読みましたが、今でも読み返します。個人的には、これほど半導体に関する有用な知識が得られた本はありませんでした。他の人より1歩も2歩も知識で差がつけられると思います。