今回はアメリカの主要な半導体株
AMD(えーえむでぃ)、NVIDIA(えぬびでぃあ)、Xilinx(ざいりんくす)
について財務状況やキャッシュフローの観点から調査していきたいと思います。
この3社はGPUやCPUなど開発、販売している会社です。
そもそもGPUとCPUはなんぞや
GPU=Graphics Processig Unit=並列計算→ゲーム、AI、自動運転
*GPUはもともとゲームソフトで使われていたもので、AI計算専用ではありません。
CPU=Central Processing Unit=連続計算→パソコン、サーバー
2つはこのような形で使われることが多いです。
CPUとGPUの違いにおいてなぜGPUの方が大量のデータを処理できるかですが、
例としてサンドウィッチに例えてご説明したいと思います。
ある人工知能の計算を1000個のサンドイッチを作るという作業に置き換えると、
GPUは並列計算といって、同様の作業を同時に大量に行うことができます。
なので、一度に
1000枚のパンを同時に置いて、
1000枚のレタスをその上に置いて、
1000スライスのトマトを置いて、
1000枚のハムを置いて、
1000枚のパンを置くという作業が同時にできます。
一方のCPUは連続計算で、一つひとつの作業を精度を高くして行っていくという形になります。
サンドウィッチで言うと、
一枚のパンを置いてから、最後にパンを上に被せるまでを一つの工程としてから、
2つ、3つ、4つ…1000個と数を重ねていきます。
AIや自動運転は単純なデータを早く計算を早く処理する必要があり、その際に適しているのはGPU(並列計算)という考え方になります。
NVIDIA
こちらはNVIDIAの過去の売上の推移ですが、
2017年に急上昇していることがわかります。理由は、
・AIやビッグデータが世界で使われ始めて、伸びてきた。
・任天堂Switchが3月に発売された。
・仮想通貨のマイニングでGPUを使うので、中国の企業が大量に購入。
このような一時的なバブルがありましたが、現在は反動減も乗り越えて業績成長が始まっているのが近年の四半期の印象です。
また、仮想通貨やゲーム機向けの売上が大半を占めていましたが、
直近は、データセンタ向けBtoBのものが成績を伸ばしています。
株式市場はゲームや仮想通貨などの一過性のものはあまり評価しません。
BtoBで中長期での必要性があるものが評価されるので、直近はデータセンター向けの売上が上がったことで、NVIDIAに対する株式市場の評価も上がってきています。
こちらがキャッシュフローの推移ですが、
赤線のフリーキャッシュフローが常にプラスです。
常にプラスこれは、この会社の企業形態でファブレスという形を取っています。
最近の半導体企業でもこのファブレスは多いのですが、
工場を保有せず、製造拠点が必要ないので発生したキャッシュはほどんど彼らのポケットに入るような仕組みになっています。お得感ありますよね。
ちなみに株価はこんな感じです。
株価は非常に堅調です。
先日インテルの株価を超えるくらいの良い調子です。
コロナの影響をもろともしないのが今のNVIDIAです。
PER 95.5倍
PBR 22.5倍
とバリュエーションもとても高いです。
またNVIDIAのGPUの技術はとても高く他の企業がまだ追いつけていないので、
当面はNVIDIAの高い評価は続いていくと思います。
AMD(アドバンテスト・マクロ・デバイセズ)
AMDは、元々インテルのかなり離れた2番手でCPUを作っている会社として認識されている方が多いのではないでしょうか。
AMDが近年注目されているのは、GPUがかなり成長市場になってきていて、CPUもシェアを少しずつ伸ばしてきているのが理由です。インテルは製造のコストダウンや歩留まり向上に苦戦しているので、CPUが供給不足になってしまいました。ノートパソコンの新モデルが売れないというのが最近起きているところにAMDがグググっと成長をしてきているのです。
こちらがAMDの業績の推移です。
パッと見ると感じあまり業績は増えていませんね…
利益も赤字だったりすので、ブルーチップな会社ではないのですが、インテルの牙城を崩す転換期にあるという時期にある様です。
キャッシュフローはNVIDIAほど良い状況ではありませんでしたが、近年かなり改善したきたというところで近年のポジティブな株価評価につながってきています。
気になるのは、AMDは今後インテルに対して優位性を保てるか?
ですよね。私はその可能性は高いと思っています。
理由としては、インテル頼みだった半導体業界がシフトチェンジしなければいけないフェーズに入ってきています。その一番の原因はインテルの製造改革において微細化がかなり難航しているというところで起こっています。
一方のAMDは、TSMCに製造を委託しています。TSMCはEUVや次世代の技術を巧妙に活用していて、TSMCの技術はインテルに対してもリードしてきている状態です。
AMDの力はもちろんあるのですが、TSMCという強力なパートナーを得ているので、今後も対インテルにおけるシェア挽回も期待できると思います。
Xilinx(ザイリンクス)
FPGA(Field Programmable Gate Array)で最大級の市場シェアを有しています。
FPGAは、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路で、特定のソリューションに特化した半導体においてかなりカスタマイズをするのですがコストが抑えられる
という半導体です。なので、ある程度半導体の役割やスペックがが固まってくると、FPGAに置き換えられるというのがこの半導体のトレンドです。
このXilinxは、通信系のソリューションが強い会社です。
例えば今は5Gへの投資が中国系企業からたくさんありますが、これが落ち着いてしまうと一緒にクールダウンしていしまうのは気をつけた方が良いかもしれません。
しかし、この企業がこれから伸びていくと見ている理由は、
今まで紹介したNVIDIAやAMDはGPUで成長している様な企業を脅かすことができる存在だからです。
GPUはAIやビッグデータなどの大量のデータを処理することは適しているのですが、元々はゲーム用の半導体です。
一方で今はgoogleやAmazonというのは、独自の高機能なAI半導体を設計・デザインしています。というところで、今後のトレンドはカスタマイズ化ということがわかります。
企業としては同時にコストを下げていく必要があるので、FPGAの需要が増えていきます。
こちらがXilinxの直近の営業実績です。
営業実績を見ると減収減益が続いています。
中国の貿易摩擦の影響、ファーウェイの影響を大きく受けていて最近はあまり調子が良くありません。
この減収減益は、昨年の12月から続いているのでもうそろそろ影響はなくなってきて、プラスに転調する日は遠くないのかなという印象です。
こちらはキャッシュフローですが、
Xilinxもファブレスというビジネスモデルをとっているので、美しいフリーキャッシュフローが創出されていることがわかります。
その貯まった現金も株主に返してくれようとしている企業です。
中国貿易摩擦やコロナの影響をやや受けてしまっていますが、
XilinxはFPGAを持っているので、AIが発展する中で中長期的に成長していくのではないかという企業であります。
TSMC
最後に少しだけおまけで…
今まで紹介してきた全ての企業の恩恵を受けるのが、台湾のTSMCです。(アメリカじゃなくてすみません)
こちらの企業は上の企業の受託製造を受けているだけでなく、インテルでさえアウトソースするという話が出てきているほど、盤石な存在です。
売上は、
こちらが売上が基本的に右肩上がりです。
技術が先端になればなるほど莫大な設備投資がかかるのですが、普通の企業ではできなくなってきています。アメリカの半導体はTSMCが無ければ経営の存続が厳しいフェーズまできてしまっています。
たまに減収減益になることもあるのですが、そこは買い場です。過去の統計をとってもすぐに増益に戻ります。
TSMCがずっと減収減益になるのは、世界の経済が崩壊していくというシナリオでしかあり得ません。
キャッシュフローも近年は毎年1兆円を超える設備投資をしていますが、
それを感じさせないキャッシュフローです。素晴らしい。
配当利回りも3.6%とかなり投資家にも思いやりのある会社です。
配当投資家でしたら、JTやキャノンではなく、TSMCを買った方がいいということも言えますね。
以上、アメリカの主要な半導体銘柄
AMD、NVIDIA、Xilinx、TSMC(台湾)
をご紹介しました。
インテルがないじゃないか!ということで、
インテルは下の記事にて詳しく解説しているので是非ご覧ください!
これからも株をがんばっていきまっしょい!
半導体株や半導体業界を勉強するなら下記の本がおすすめです。
「半導体が工場でどうやって製造されるのか?」、「半導体工場は水や電力等のインフラはどうしているのか」「半導体製造装置はどのように並べられるのか」、等ネットでは入手できない知識を得れます。
私は何年も前に読みましたが、今でも読み返します。個人的には、これほど半導体に関する有用な知識が得られた本はありませんでした。他の人より1歩も2歩も知識で差がつけられると思います。