半導体株調査部

半導体株の分析と投資実践

NVIDIAのARM買収って結局誰得なの?

 

こんにちは、うみがめです。

NVIDIAがARMを買収するという報道がありました。

以前から話はあったのですが、それがより具体化しているというところです。

それをNVIDIAの視点、ソフトバンクグループ視点、ARMの視点それぞれの視点から考えていきたいと思います。

 

ざっくりと誰得なの?

NVIDIA→◯

NVIDIAにとっては、アップサイドはありつつリスクは低いのでなかなかいい話なのではないかなと思います。

ソフトバンクG→△

売却によって益は出ていますが、あまり高いリターンで売れなかったというのと、

NVIDIAの高い株を握らされるのではないかと予想しています。なので、個人的には△にしています。

ARM→✖️

ARMのいいところである中立性が失われるのでネガティブな動きだったのではないかなと思っています。

 

報道の概要

もともと7月末にBloombergがNVIDIAがARMを買収するのではないかという話がありました。9/12にウォールストリートジャーナルが具体的に買収案が具体化し、NVIDIAがARMを400億ドル(約4兆2000億円程度)で買収するという報道が出ています。

ソフトバンクGは現金と株式による買収という内容です。

今週(9月14日の週)にも発表があるので、かなり大詰めにきています。

しかし、合意には至っていないというところで直前で破談になっていまう確率もゼロではありません。

ソフトバンクGはARMを2016年に320億ドルで買収しているので、80億ドルの利益になっています。

 

ARM:CPU(IP)

ビジネスモデルはライセンスとロイヤリティー

お客さんと色々開発して行って、製品ができる時にお金をもらうのと、彼らのIPを使った製品を作った会社から微々たるものではありますがロイヤルティをもらいます。

特にスマホ周りが強く、ARMのアーキテクチャを使っているスマホがほとんどです。

 

NVIDIA:GPU

ファブレスという業態で、設計のみを行っています。

ゲーム、データセンター向けのAIや機械学習などで用いられることが多いです。

 

というところで活躍している半導体の分野が違うというところと、

ARMのビジネスモデルはオープンなプラットフォームでロイヤルティベースで展開しているのに対して、NVIDIAは得意なGPUを売っていくというところで利益を生み出している会社です。

 

 

NVIDIAにとってのメリット

CPUへの知見のアクセスが高まる

ARMは基本的に世界中の半導体メーカーと共同しているのと優秀なアーキテクチャを持っているので、NVIDIAのCPUへの知見が高まります。

CPUの開発効率も増す

ARMは色々な会社の開発のサポートを行っていて、融合によって知識をさらに蓄積できます。

プラットフォームの価値が上がる可能性

ちょっとこれは理想論に近いのですが、NVIDIAはCUDAというGPU向けの汎用並列コンピューティングプラットフォームを持っていて、ARMもアーキテクチャを融合させることで価値が上がる可能性が高まります。

ARMの成長率は高い(x86の転換)

インテルとかAMD系のアーキテクチャーからARMのアーキテクチャへ変換している企業が増えています。電気効率が良いなどのメリットがあるので、アップルなども転換しています。

事業モデルに厚みが出る

NVIDIAはGPUを売ってく販売モデルですが、ARMはサブスクに少し近い事業モデル、ロイヤリティで稼ぐモデルをとっているので、事業ポートフォリオに厚みがでます。

 

NVIDIAにとってのデメリット

この契約(ディール)がすんなり通るかが怪しい(例NXPとQualcom)

近年の半導体業界のディールは、大型なディールは非常に通りにくくなっています。

半導体のプレイヤーがあまりにも強大な力を持つと、ユーザーが困ってしまうということが起きます。

グローバル各の国の審査が通ってディールが通るのもかなり難しいです。

米中摩擦

ARMはイギリス発祥の企業でした。米国のものではなかったので、中国も自由に使えたというロジックが通っていました。

今回NVIDIAが買収するとアメリカ企業なので、ARMのIPOが中国で使いにくくなるのではないかという懸念が出てきます。

ARM CHINAはARMが株式を50%以上もっていなくて、半分持分を中国に与えています。そこもかなり複雑になっています。なのでこれからARM CHINAをこれからどうしていくのかも問題になります。

NVIDIAの傘下に入ったARMを中国がどこまで使えるのかを解決していくかの処理がかなり時間がかかりそうです。

ARMのエコシステムの崩壊・既存顧客の離反の可能性

ARMの元々の顧客が、NVIDIAのライバルにあたる企業が多く、ARMの現在の顧客が長期的にはARMを外していくような動きが出てくる可能性が高いです。

 

ソフトバンクG

2016年に320億ドルで買収し、400億ドルで売却なので25%の利益を得ています。

この数年間で25%というところでは、損はしていないが機会損失を考えると成功したとは言いにくいです。

というのも、、、

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今回ソフトバンクGはNVIDIAの史上最高値くらいのNVIDIAの株を摑まされるという状況が発生していて、こうなるのであれば2016年にNVIDIAの株を買っておけばよかったのでは?となります。

タラレバは言っても仕方ないのですが、ディールとして成功したかどうかを判断するときには2016年にARMを買うのではなくNVIDIAを買っておくべきだった。というように言えると思います。

NVIDIAの株価は2016年から10倍以上になっています。あっぱれです。

 

というとろこで、他の半導体株を買っておいた方が儲かっていたというのも一つの事実ではあります。

 

まとめ

  • ディールがどこまで実現するか疑問、実現性はそこまで高くない?
  • NVIDIAはアップサイドがありつつ、低い良いディールだと思います。
  • ソフトバンクGの評価は人によって様々な印象になると思います。ARMの持分が希釈し、今の高いバリュエーションでNVIDIA持分が増えることは個人的には微妙かなと思います。
  • ARMの視点では幅広いプラットフォームが売りだったARMのビジネスモデルからNVIDIAとの統合により中立色が薄れることと、米中の摩擦の観点で考えた際にアメリカ側に立つというところでは中立色が減ってしまうのかなと思います。というところを考えるとARMにとってはネガティブなディールだったのではないかと思います。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!

株を頑張っていきまっしょい!

 

 

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