半導体株調査部

半導体株の分析と投資実践

TSMC株について徹底解説

 

みなさん、こんにちは。

今回はTSMCについてご紹介します。

こちらは台湾の半導製造企業ですが、世の中の半導体製造はこのTSMCがなければ成り立たないというような状況になっています。 

目次
  • TSMC及びファンドリについて
  • ファウンドリ・半導体の分業制
  • プロの投資家はTSMCの決算のどこに目をつけるか?
  • 投資する際のポイント

 

TSMC及びファウンドリについて

 TSMC

モリス・チャン(中国)が1987年に創業。

彼はアメリカ・ボストンのハーヴァード大学を卒業し、その後アメリカの半導体企業に入社、プロセス開発を通じてファウンドリ事業形態においてビジネスチャンスがあると見抜いて創業しました。

ファウンドリ売上高は、1兆99億台湾元(約4兆円)と高水準です。

そしてファウンドリ分野の世界シェアは50%を超えています。

競合は、サムスン(韓国)、グローバルファウンドリーズ(アメリカ)、UMC(台湾)などがありますが、開発力や技術ノード、設備投資額でもTSMCがダントツでトップです。

 

こちらがTSMCの株価の推移ですが、右肩上がり絶好調ですね。

長い期間高い競争力を維持して、半導体市場が成長するのと比例して株価も伸びています。

 

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そもそもファウンドリとは?

ファブレス=設計

半導体の設計書を製作し、外注するという役割を担ってます。現在、半導体メーカーは設計のみを行い、自社では製造せずファウンドリに外注するというのが流れになっています。企業例:アップル(アメリカ)、AMD(アメリカ)、クアルコム(アメリカ)、その他多数の企業

ファウンドリ=製造

ファブレスから委託されたものを製造します。半導体において非常に重要な回路(=トランジスタ)を作る工程を行います。1つのウエハにおいて回路を数か月にわたって作りこむので、とてもお金もかかるプロセスです。

企業例:TSMC(台湾)、サムスン(韓国)、GF(アメリカ)

OSAT=パッケージ

最後はウエハをパッケージして細かくチップに分けるという工程があります。こちらの工程はあまり付加価値が高くないので、ファウンドリ企業は外注をすることが多いです。

こちらのOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)は、ファウンドリからウエハを受け取ってパッケージがするという作業に特化しています。

企業例:ASE(台湾)、JCET(中国)

 

なぜファウンドリが求められたか?

半導体業界は非常に競争が激しく、CPUやGPUが色々開発している中で設計に特化しないと生き残れないというところがあります。

また、半導体をつくるとなると先端半導体製造の巨額な設備投資や開発費が必要になります。TSMCだけで2020年設備投資額は、16~17億ドル(約2兆円弱)となっています。そしてお金がかかるだけではなく、最先端プロセスノード(技術)では5nm(ナノメートル)の微細加工が難易度の高い技術が必要とされています。

TSMCはこの5nmのプロセスノードの量産化に成功しています。

なぜTSMCがここまで進撃の技術革新をできているかというと、EUVという非常に難易度が高い半導体の次世代技術の量産化に成功したからです。

TSMCの半導体のエキスパートが会社創業より長い年月をかけて、このような量産化にこぎつけていますが、アップルやクアルコムがそのノウハウを持っていないので、TSMCがほぼ独走している状況になっています。

 

プロの投資家はTSMCの決算のどこに目をつけるか?

 

YSMCの決算は、通常の決算と同様プレゼン資料やカンファレンスコールで配信されるという形をとっています。全て英語ですが、英語にあまり抵抗の無い方は是非見てみてください。ロイターやブルンバーグの速報よりも深くTSMCの今後について知ることができます。

特に注目していただきたい点は、スマートフォンの需要見通しと在庫水準です。TSMCのお客さんはスマートフォンにチップを提供する会社が非常に多いので、TSMCの在庫や彼らがみている事業水準は、これからのスマートフォンの需要動向をよく表しています。TSMCがネガティブな発言を多くしていると、スマートフォン関連市場は調整に入るほど影響力があります。TSMCやスマートフォン関連の在庫が健全であると、株価が底打ちするという傾向があります。

また、設備投資見通しも重要なポイントです。こちらはカンファレンスコールで言及されることが多いです。その年や来年の設備投資の見通しや水準についてコメントします。従前の期待値より設備投資水準が大きく上回ると、製造装置株にも良い影響を及ぼします。

また彼らは決算で、先端半導体の技術動向・開発動向について、ここ5年10年で来る技術なども紹介します。直近では、先端のパッケージングについてのコメントも増えていたりするので、パッケージング関連企業の株を覗いてみることもできると思います。

 

 TSMC関連株に投資する際のポイント

①TSMC株

・スマートフォン需要のサイクル

 TSMC株はスマートフォンの業績に連動するので、スマートフォンの在庫水準が高い時は業績や株価も調整します。また、スマートフォンは製品サイクルや技術サイクルがあります。今は5Gという新しい技術サイクルにあるので、ポジティブな状況にあります。またアップルやサムスンなどの製品サイクルですと、例えば、アップルが5Gの新しいスマートフォンを発売する時というのは、製品サイクルが良く、業績も上がります。

 

・シェア争い(近年は独走状態ですが…)

 少し前は、クアルコムやアップルなどがTSMCを選ぶのか、サムスンを選ぶのか、ファウンドリをどこに受託するのかというのが業績にも大きく影響していました。近年は、TSMCの独走状態が続いているのであまり気にしなくても良くなってきてはいます。

 

②半導体製造装置・半導体電子材料

TSMCの業績はこちらの2つの分野でも大きく影響を受けるので、下記の企業もしっかりとチェックしておくと良いと思います。

・半導体製造装置株

 東京エレクトロン、SCREEN

・半導体電子材料

 JSR、SUMCO、オルガノ

これらの企業は、TSMCが設備投資を修正したら、連動して修正する可能性が高いです。例えば、TSMCが「2020年に16億USD設備投資を計画しています」と年初に発表して、期中に設備見通しを修正したら上記の企業は連動して正する可能性が高いです。こちらの上方修正や下方修正は同じ方向に続く可能性が大変高いです。

近年は、TSMCは上方修正を試続けています。なので、とても良い風が吹いていますが、これが一度でも下方修正に入るとそのダウンサイクルが続いてしまうので、下方修正が入ったらすぐに半導体装置株や半導体電子材料株への投資は一旦おやすみした方がいいかなと私は思います。

 

以上、TSMC株について知っておいていただきたいことをお伝えしました。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!

またこれからも株式投資がんばっていきまっしょい!

 

半導体株や半導体業界を勉強するなら下記の本がおすすめです。

「半導体が工場でどうやって製造されるのか?」、「半導体工場は水や電力等のインフラはどうしているのか」「半導体製造装置はどのように並べられるのか」、等ネットでは入手できない知識を得れます。 

私は何年も前に読みましたが、今でも読み返します。個人的には、これほど半導体に関する有用な知識が得られた本はありませんでした。他の人より1歩も2歩も知識で差がつけられると思います。