半導体株調査部

半導体株の分析と投資実践

米国による中国SMIC規制でやばい株は…?!

アメリカが中国のファウンドリSMICに輸出規制をするという報道がありました。

これは半導体市場にとってとてもネガティブなニュースです。

このニュースで影響が軽微な会社、逆に被害甚大になる恐れのある会社もあるのでその概要を整理していきたいと思います。

 

以前こちらの東京エレクトロンの記事を書いた際にも、

米中摩擦について言及していたのですが、

www.kogatakabu.com

 上の記事の記事の中では、

JHICC(福建省晋華集成電路 Jinhua Integrated Circuit Company)の苦い記憶がありました。というようにお伝えしていましたが、これが今回はSMICで起きているという状況です。

 

では本題に…

9月4日に米国がSMICへの制裁を示唆という報道がありました

アメリカの国防総省高官が禁輸リスト入りを検討してるという内容です。

別の米政府高官は中国軍との関係について調査しているとコメントをしています。

これに対し、SMICは緊急声明を開き、

SMICは関係する各国の法令を厳格に遵守しており、同社がアメリカ製の設備を購入する際にアメリカ商務省は長年にわたって輸出許可を与えてきたと説明。さらにSMICの製品は全て民生向けで、軍事目的の経営活動は行ったことはないと声明しています。

 

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これを受けてSMICの株価は4日に20%程度下がり、現在は底打ちはしているものの、

コロナから回復をしてきていた7月に比べると三分の一程度に落ち込んでいます。

 

SMICへの影響

  • 先端半導体が製造できなくなる

現在SMICは28nmが主流ですが、14nmという世代の製造を始めていました。

それがアメリカの製造装置を買えないことで、製造自体ができなくなってしまいます。

  • 装置のメンテナンス・修理ができなくなる

既にSMICが購入しているアメリカ企業の製造装置のメンテナンス修理のサービスも受けれなくなるのではないかと思います。これでは、メンテナンスを受けれないことで既存の製造キャパシティが数年後下がってきてしまうことが予想されます。

  • 中国のロジック半導体は大きく後退してしまうかも

SMICは中国の国策企業に近いので、中国のロジック半導体、例えばスマートフォンに使われるアプリケーションプロセッサやサーバー用のチップなどが製造できないので、中国全体のロジック半導体の進化の速度が落ちてしまうことが懸念されます。

 

これまでのアメリカの制裁

JHICC(DRAM)

マイクロンなどの既存の会社から技術を盗用したのではないかと判断され、装置の輸出が止まるという制裁を受けました。

HUAWEI(セットメーカー)

米国政府は米国製設備で製造された半導体を米国政府の許可なくHuaweiに輸出することを禁止する方針を発表しました。

SMIC(ロジック)

SMICだけでなく半導体を製造しているその他の中国メモリ企業にも制裁の手が伸びる可能性もゼロではありません。

今後は生産・製造が成功すればするほど今後のインプリケーションも考えるとその可能性は高まります。

 

関連株への影響

SMICの年間投設備投資:約4000億円

これは製造装置市場(WFE)に6兆円に対して約7%とかなり占めているわけではありません。

今年の分はもう発注しているので心配はありませんが、来年に数%の減収・減益ファクターとして考えられます。

 

やばい株:SMICがお客さんの企業

前工程製造装置メーカー

日本では東京エレクトロン、SCREEN、アメリではアプライドマテリアルズなどが挙げられます。そしてその中でもやばいのがSCREENです。

かなりSMICに依存しているような状態だったので、影響を受けやすいと思います。

逆に軽微なのは東京エレクトロンです。こちらはサムスンなども主な顧客としてあるので株価は下がっていますが、SCREENほどの影響は受けません。

 

関連サプライチェーン

このSMICの制裁は中国の本気度を感じるので、中国の半導体製造そのものへの危機感を感じます。ということで中国依存度が高い企業もネガティブかなともいます。

後工程のディスコ、東京精密(OSAT)

これらの企業はSMICが発注している会社がお客さんなので、遅行して影響がでできそうです。

 

中国ストーリーが期待されている企業

栗田工業(超純水)、野村マイクロなどが挙げられます。

中国の半導体製造国への投資の恩恵を受けていくと思われていましたが、ここでアメリカの制裁のインパクト度合いによってはこれら企業の株価も少し怖いなと思います。

但し、アメリカの中国への規制がメモリ産業にまで力が及んだ際に影響が出ると思われるので、SMICだけへの制裁でしたら影響は少ないと思います。

 

相対的に影響が軽微な企業:EUVやSMICと中国半導体が競合の企業

レーザーテック、ASMLはEUVストーリーの企業なので影響は軽微と思われます。

TMSCはSMICの競合です。なのでこれからTSMCの独壇場になりそうです。

そしてそのTSMCにも規制がかかってしまったら、次に頼るしかないのはサムスンです。サムスンはメモリが特に稼ぎ頭です。この中国の報道では、中国の半導体産業成長自体が危ぶまれているので、メモリをやっているサムスンは陰で喜んでいる状況です。

 

これはまだニュース段階なので、これから中国もかなり反発をしていくので、

すんなりとこの制裁を受け入れるとは思いません。

非常に重要なニュースなのでこれからの動向にもしっかりと注視をしていきたいと思います。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!

株をがんばっていきまっしょい!

 

 

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