みなさん、こんにちは。
今回は、半導体業界において非常に重要なテーマ米中半導体摩擦についてご紹介したいと思います。
みなさんご存知の通り米中ではテクノロジーの覇権を争う戦いが続いています。
これは特に半導体業界における摩擦と言い換えても過言でないほど、半導体が関係しています。
この摩擦によって日本の半導体銘柄がどういった影響を受けるのかをお話ししていきたいと思います。
目次
- 中国の野望
- 米国の視点
- 日本の関連銘柄
- 投資で考えるべきポイント
中国の野望
中国では中国製造2025(MADE IN CHINA 2025)という産業政策を行っており、これは2025年までに世界の製造強国入りを目指すという目標で様々なプログラムがいま走っています。
目標計画は、3段階に分かれていて現在は第一段階、2015年に発足し30年後の最終段階2045年には製造強国トップになるという計画です。
その中でも特に力を注ぐのを重点10分野というように分かれていて、その中でも次世代情報技術(ICT)に力を入れています。既に有力なテクノロジー企業(アリババ、テンセント、ファーウェイ)などの企業が育っています。しかし、情報技術産業の根幹となる半導体産業においてはまだまだ外需依存というようになっています。
中国は他国に依存しない強い経済をつくるためには今より半導体製造業界の育成に力を入れていくことが、これからの中国製造2025やその先の中国の発展において非常に重要な課題となっています。
ちなみに中国半導体産業の実力ですが、
2019年の半導体シェアトップ10に中国企業はゼロです。
なので、先端半導体(ロジック、メモリ)は電子部品まで外需依存しています。
中国国内でも製造はしていますが、外国資本の企業が製造しているので、中国企業に技術があるとは言えません。
半導体や電子部品だけでなく、それを作っている半導体製造装置や材料も外需依存しています。
中国はアリババやテンセントなど立派なテクノロジー企業がありますが、データ処理を可能にしている半導体や製造装置などのサプライチェーンに依存している状態です。
中国はこれをなんとかせねば!ということで、国家ファンドを創設して、補助金をどんどん投入して半導体企業産業を育成していくという対策をとっています。
米国の視点
ファーウェイの躍進に危機感
5G通信機器のトップベンダですし、先端半導体の設計技術もファーウェイの子会社ハイシリコンが最先端デザインを行ったりしています。5Gの通信機器がファーウェイが世間を席巻すると、中国が世界の重要な情報を手に入れる可能性があるというところは想像に難くないところです。
中国は過去補助金で産業破壊の過去(LED・液晶)
過去中国は様々な分野で補助金をどんどん投資し、自国の会社を支援、中国企業のシェアをあげることによって、他国のその市場の経済合理性を破壊してしまったという過去があります。
LEDでは、巨額の補助金を投資し、韓国や日本の企業をワイプアウトしてしまうという事例もあります。
アメリカはこれが半導体でも起こることを危惧しています。
半導体は、パソコン、スマートフォン、企業のサーバなど現在のデータ社会においてなくてはならないものです。その肝の部分を中国に握られてしまうという危機感もあります。
弱点は欧米の半導体や半導体装置に依存している
一方で、アメリカからすると中国は半導体のサプライチェーンでは実力があまりありません。ファーウェイや中国半導体企業が使っている製品は欧米の半導体が主です。自国で製造する力は無いと見たので、中国の躍進をここで食い止めよう!と、牽制を投げます。それは、、
- 半導体や半導体製造装置の輸出をファーウェイに対して規制
- TSMCに対して制限をかける
TSMCはファウンドリ企業なので、
ファーウェイから製造受託依頼を受けて→製品を製造→製造した製品をファーウェイに返す→ファーウェイはスマートフォンなどにしてそれを市場に出す
という流れがありますが、アメリカは「ファーウェイに半導体を売るのなら、アメリカの企業の装置は輸出しません」と規制をかけたのです。TSMCは半導体の装置が無ければ、ビジネスが成り立たないのでアメリカの要求を飲まざるを得ないという状況になっています。なので現在TSMCはファーウェイに対しての輸出を禁止されています。
日本の関連銘柄
このように中国とアメリカで非常に激しい鍔迫り合いが起きているわけですが、日本のどのうような銘柄に影響があるのか見ていきたいと思います。
半導体・電子部品…村田製作所、キオクシア、太陽誘電
こちらの企業はファーウェイやその他中国企業がお客さんなので、
この摩擦も影響が出てくると思います。
半導体製造装置…東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック
こういった会社は、中国製造2025で中国が半導体産業を育成したい際にも、大事なお客さんになりえるわけです。
またこれらの企業の競合はアメリカにあるので、米中の摩擦が大きくなると、中国企業はアメリカの製品ではなく、日本のメーカーから買う可能性があります。
半導体電子材料…信越化学、SUMCO、JSR
中国が半導体育成に力を入れれば、材料も必要になるので需要が増えるという可能性があります。
この半導体摩擦で関係するのは、やはり半導体サプライチェーンということになります。
考えるべきポイント
結局、この摩擦がポジティブなのかネガティブなのか?が一番気になりますが、
実はこれは一概には良し悪しを言い切れない、
これらの企業に投資する際に考えるべきポイントをまとめてみました。
・半導体関連銘柄では、アメリカ企業がライバルである場合、日本企業にチャンスが増えるかもしれない。
中国の立場からすると、アメリカ企業に依存してしまうと装置の輸出禁止、材料の輸出禁止をいつ、どんなタイミングで厳されるか分かりません。もしも中国企業に、アメリカか日本の2つのオプションない場合には、日本にチャンスがくるかもしれません。
・中国が補助金でばんばん投資するなら、短期的には需要はプラス
アメリカがいかに輸出規制をしようと、中国が半導体産業を自国で製造したいというのは諦める必要がないので補助金の投資を続け(中国はまだ技術がないので巨額にはなってしまいますが)、それに伴い日本の関連企業が投資の恩恵を受ける可能性があります。
・親米国と親中国で2つの生態系が生まれ、投資量は増える。
アメリカで使うものは中国で作らない。中国で使うものはアメリカで作らない。このように地産地消のようになると、投資が分散すると非効率になり、投資が増えます。アメリカと中国両方に提供できる会社はこの2カ国が争ってくれた方が、それぞれから注文を受けれるので、ポジティブになり得ると言えます。
・長期的には中国のローカルメーカーが取って代わる可能性
今までの半導体の歴史でも、まずは装置や材料を外国から買って半導体を作っていたものを、コストを抑えて製造したり、国の産業の成長を促すため、しばらく経つと装置や素材を内製するという流れになってきます。これは、韓国や日本でも起きた流れです。
このまま中国が産業政策をおこない、国内企業に投資を進めると、日本の素材メーカーや装置メーカーが追いやられる可能性があります。
半導体は国家の発展において根幹となる業界なので、いつか中国に握られてしまうとなると単なる経済的な問題ではなく、安全保障も絡んでくるような世界政治ににとっても大事なトピックであるといえます。
・日本銘柄へのインパクト
今後、米中の半導体摩擦はより規制や制限などが出てきて、激化していくことが予想されます。
短期(〜12ヶ月):米中摩擦は不安定要因
株式市場は、このような米中摩擦のようなニュースフローはリスク視する傾向があったり、現在、半導体関連銘柄は非常に株価水準が好況なので少しでも悪いニュースに反応しやすいという下地もあります。
中期(〜3年程度):非効率な投資はプラス要因
中国はこれからしばらく半導体事業に投資していくと思います。そういった巨額な投資の恩恵を受ける半導体関連企業は多くあると思います。
長期(〜10年程度):生き残れる会社かどうかの選別が必要
中国が国産化を進めていく中で、本当に生き残れるか?をポイントにみていく必要があります。
①絶えず技術革新や技術進化ができる製品・企業であるか?(例:EUV、先端メモリを作る装置など)
②中国で溶け込める企業(超大企業はおそらく無理)
うまく中国でジョイントベンチャーを作り、中国化をすると中国政府からのサポートを受けれる、そんな立場にうまく自分を置ける企業も成功する可能性が高いです。
→中国の現地化に躊躇なく、競争力がある企業が生き残れる
中期的に投資する際にも、長期的な視点を取り入れながら投資した方がベストかなと思います。
生き残れる企業
レーザーテック 、アドバンテスト、HOYAなど
これらは全てうみがめの半導体株調査部でYoutubeにて動画配信しているので、
是非チェックしていただいて、いいなと思った企業に関しては、
またより深く調べていただければと思います。
逆に危ないかも?企業
SUMCO
競合状況が他社に比べてあまりよく無い。
キオクシア
NAND市場は中国プレイヤーが育ってきており、かつ補助金が出ているので打ち勝てる可能性はあまり高く無いかも…
以上、米中テクノロジー摩擦に関してお伝えしました!今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!とんでもなく暑い日が続きますが、株をかんばっていきまっしょい!
半導体株や半導体業界を勉強するなら下記の本がおすすめです。
「半導体が工場でどうやって製造されるのか?」、「半導体工場は水や電力等のインフラはどうしているのか」「半導体製造装置はどのように並べられるのか」、等ネットでは入手できない知識を得れます。
私は何年も前に読みましたが、今でも読み返します。個人的には、これほど半導体に関する有用な知識が得られた本はありませんでした。他の人より1歩も2歩も知識で差がつけられると思います。