半導体株調査部

半導体株の分析と投資実践

EUVの最強王者、ASML株について解説

みなさん、こんにちは。

今回は露光装置で断トツトップのASMLについてご紹介します。

下の動画でもわかりやすくお伝えしているので是非ご覧ください!目次

  • 露光装置とは
  • ASMLの概要
  • ASMLの強み
  • ASMLのリスク

 

露光装置とは?

 シリコンなどで作られたウェハの上にトランジスタというの焼き付けていくことで半導体をつくる上で必要になります。そのトランジスタのための設計図(パターニング)を板面に焼き付けるのが露光装置です。

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こちらは一般的な露光装置の機能です。

上から光が下に出て、投影レンズを通してウェハ上に照射されるのが簡単な概要です。真ん中あたりのウェアステージというところにシリコンウェハが置かれて、シリコンウェハが光が当てられて設計図を書いていきます。

ここでのキーコンポーネントは2つです。

1つは光学技術です。光を照射するので、光をうまく操ってうまく集中させて、正確な位置に当てるという技術が必要です。

2つめは、ウェハを動かしたりとか複雑な精密技術が必要です。精密なウェハを作るためにはこのように微細な動きににも対応できる技術が必要です。

 

最先端かつ精密な技術を求められる機器ですので、製造装置を製造するのも大変な高等技術です。

値段にもきちんと反映されていて、下にあるのがARFの露光装置の図ですが、一台なんと50億円です。

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ASMLの概要

 ASMLは1984年にオランダで創立されました。

2019年ASMLの露光装置シェアは90%以上と非常に独占的なシェアをもっています。

競合は日本のニコンやキャノンでしたが、過去20年ほどでニコンのシェアを奪取しています。決めては「ツインステージ技術」でした。これは、1つウェハが露光過程にあるときに、装置ないにあるもう一つのウェハで露光に先立つ計測を行い、ウェハ処理の並行作業をする技術です。ASMLはこれで生産性を大きく上げて、コストを下げました。このような顧客思いの対策によってニコンからシェアを奪いました。

また、近年はEUV露光装置をてがける唯一の企業です。ASML以外は誰も製造していません。過去キャノンやニコンも挑みましたが、開発に多大なコストが必要なため、やむなく撤退しました。

ASMLはこれからの半導体の進化、機能向上を可能にできる唯一の企業といえます。

 

ASMLはどんな分野に装置を提供しているか?

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メモリ向けとロジック向けの装置、メンテナンスサービス、インストールベースの売上の3つで構成されています。

2019年のところ見ていただくと、緑色のメモリの売上が前年から落ちています。メモリの市況もアップダウンがあるので、ASMLにおけるメモリ向けの売上も過去5年間、同じように変動しています。

一方で、青色のロジック向けの売上が非常に伸びてきています。TSMCでしたり、インテルなどの企業が対象ですが、やはりEUVの導入が起こり始めてきたのが2019年で、急激に伸びてきています。

黄色のInstalled Base Managementはサービスやリペアなどのメンテナンス、ソリューションが入ってきます。これも20%と大きな割合を占めています。

これを見ていただくと、装置を売って終わりではない。販売後もきちんとお金をつくる流れができていることがわかります。

 

次は、TSMCがどういった装置を提供しているかをご紹介して行きたいと思います。

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こちらがテクノロジーの売上構成比です。

2019年の売上構成比を見ると、EUVが31%も占めていて、かなり高くなってきています。また53%はArFi(エーアールエフアイ)が占めています。これはArFの液浸と呼ばれる露光装置の種類です。

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こちらは2019年に販売した露光装置の台数構成比になります。

先ほどの円グラフで31%を占めていたEUV露光装置、26台しか販売していません

逆にArFiは82台販売しても先ほどの円グラフでは53%しか占めていません。

この2つのグラフでわかるように、EUV露光装置は非常に単価が高いです。

これからシェア100%のEUVの販売が増えればASMLの収益も大幅に上がることが予測できます。

EUVというのは、現段階ではTSMCのみに販売しているのですが、今後数年かけて徐々に広がっていくものです。一方で、ASMLがEUV露光装置をつくるのもキャパシティが限られていて、大体年間30程度製造できたらいいところです

これから製造量を増やしていくのがASMLの課題ですが、それをするためにはサプライチェーンも増強していかなければなりません。EUVどんどん増やして行きたいのですが、キャパシティを増やすのは簡単には行かないというのが今の状況です。

 

ASMLは製造技術が進んでいるだけではなく、株主還元が優れています。

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こちらが自社株買いと配当の推移になります。上が配当で、下が自社株買いです。

ご覧いただけるように2010年から毎年還元額を引き上げています。

市場をほぼ独占していて、キャッシュもたくさん生み出せて、それを惜しげもなく投資家に還元しているというのわかりますね。

 

ASMLの強み

 DUVという従来型の露光装置があり(EUVの一つ前の型というイメージです)、こちらも90%のシェアをもっており、圧倒的な競争力があります。

EUVに関しては、独占企業なのでライバルがいません。

この会社の抜け目が無いと感じるのが、HMI(ヘルメスマイクロビジョン)という会社を買収しています。こちらの会社は露光装置のパターニングする際にどうしたらプロセスコントロールができるかを検査・計測できる機器を持っている会社です。

このようにASMLは露光装置の周辺分野の強化も怠っていないのです。ただ装置を販売するだけでなく、ソリューションプロバイダ、どうしたら半導体メーカーをより効率良く露光装置を使えるかというところも意識してポートフォリオを拡大しているのもASMLの強みです。

ASLMは今まで売った装置の利益はきちんと返ってきているので、サービス売上も非常によく積み上がっています。これは、新規装置が景気後退で売れない時に、業績を安定的に推移させるためのいい保険になります。こちらのサービス売上も魅力のひとつです。

 

ASMLのリスク

 魅力しか今まで書いていなかったのですが、リスクについてもご紹介します。

これは強すぎるが故のリスクというところでしょうか。

 

米中摩擦:アメリカから要請があり、SMIC(中国)へのEUV輸出を禁止されています。ASMLは中国に顧客がいるにも関わらず、装置が販売できないという状況です。しかし、中国自体EUVに移行して半導体を作るほど半導体技術が進歩していないので、現段階では傷が浅いのですが、将来的には気になる点になります。

ニコンの半導体事業の行先:ニコンが今経営危機にあり、半導体露光装置事業をこれからどうするかがわかりません。もしかしたら、他の会社に売却してしまうかもしれない。そうなるとその買った会社が巨額な投資をして急成長をする可能性もあるかもしれません。実現性はさておき、中国企業が買ったら厄介な展開になるかもしれません。それをさせないためにアメリカ政府も日本政府も動くとは思いますが、そういったリスクもゼロではありません。

微細化以外の方法の模索:ASLMが強くなりすぎて、価格競争がないため露光装置のコストも上がっています。露光装置を使わない安い方法が無いかと研究をしている人も出てくるかもしれまん。

 

というように決定的な弱みはありません!本当にすごい会社です。

株価にもそれが表れています。

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こちらが長期の株価推移ですが、1995年に2ユーロだった株価が現在、310ユーロです。その間配当額もしっかりと払っています。非常にリターンの高い投資です。

EUVもいよいよ本格化するので、これから成長が止まらない企業です。

 

ASMLの投資スタンス

 長期投資に適している優良銘柄

私自身も投資対象としてみています。

いつ買ってもいいのですが、できれば少しでも安い時に買いたいですね…対策としては、

コツコツ積み立てる:毎週一定程度、ドルコスト平均と近い感じでこつこつと投資していくスタンスです。

〇〇ショックのように市場全体が下がる際に買い増すスタンス:コロナショックやリーマンショックなどの節目にTSML株を買うのを習慣化するといいのかなと思います。

 

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!

今週がまた始まりました!株式投資がんばっていきまっしょい!

 

 

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